日々是好日|数年ごとに、自分の成長を確かめるために読みたい本【読書感想】
【日日是好日 〜「お茶」が教えてくれた15のしあわせ〜】 (新潮文庫)
森下典子 著
2008年に文化が出版され、その際何気なく読み感銘を受け、「数年後にまた読みたい」と大切にとっておいた本。
先日お亡くなりに樹木希林さん主演の映画が公開されるということで、本屋さんでランキングに入っていたので久々に読みました。
お茶の本だけど、お茶の本じゃない、人生全てにおいてに通じる大切なことを教えてくれる本です。
「日々是好日」文庫版のあらすじ
大学生のころからお茶のお稽古に通い始めた著者が、25年に渡ってお茶を学び、得た気付きが綴られたエッセイ。
いつか分かることもあるということ。
歩くだけでも、どちらの足から、
一畳を何歩で歩いて何歩めで縁を超える、
などひとつひとつの動作がすべてものすごく細かく、厳しく決められているお茶の世界。
少女だった著者が、意味が分からないと思いつつも、
・型だけの真似でいい、なぜでもいいから、ひたすらやり続ける
・頭で考えず、繰り返し繰り返しやって慣れる、体に覚えさせる
との先生の教えをもとに厳しい礼儀作法を何年も繰り返していたら、ある日、身体が自然と動くようになっている。
そしてまたある日気づきを得ます。このためだったのか!って。
少年漫画によくあるシーンですよね。まさに修行そのものです。
仕事や学校でも
「こんなことしても意味がない」とか、
「なぜしないといけないか分からない」
ってことが沢山あって、ついすぐに答えを探してしまうけど
でも、世の中には今すぐに分かるものだけではなくて、時間をかけないと分からないものも存在する、
著者はそれをお茶の中で体感します。
今を生きるしかないということ。
お茶の世界は毎回道具も変わり、夏と冬では作法もガラリと変わる。
やっと一つのことに慣れてきたと思ったらどんどん変わっていってしまう。
でもそんなことを悔やんでも意味はなくて、気持ちを切り替えて、いま目の前のことに集中することしかできない。
これも日々変わっていく世の中の中で、大切な心の持ち方だなと思います。
五感で季節と繋がり、生を感じること。
水とお湯の音の違い、
秋の雨と梅雨の雨の音の違いなど、
著者はお茶の経験を積むごとに気づいていきます。
お茶をやっていると、季節は4つだけでなく、毎週変わって行くんだそう。
五感をすべて使って季節とのつながりを体感する、
こんな風に年をとっていけたらと憧れます。
季節ごとに目先を変えるお茶菓子についても、お店の名前から実名で掲載されていて、
あまりに美味しそうなのでそのページは折り目だらけに・・・・。
「日々是好日」のタイトルの意味
禅語のひとつであるこの言葉は「毎日毎日が素晴らしい」という意味だけではなく、
そこから、毎日が良い日となるよう努めるべきだと述べているとする解釈や、さらに進んで、そもそも日々について良し悪しを考え一喜一憂することが誤りであり常に今この時が大切なのだ、
あるいは、あるがままを良しとして受け入れるのだ、と述べているなどとする解釈がなされている。
という意味があり、本書のテーマそのものだと感じます。
本書の中に登場する80歳を過ぎたご婦人も「まだまだ勉強中」といわれるように、お茶の世界も人生も分からないことだらけ。
お茶と一緒で、その時々を大切にひたすら繰り返し進んでいけば、今わからないこともいつか分かるようになるのかなと思います。
あいにく数年前に読んだときと、今回読んだときでは「こんな風になれたらいいな」
との感想であまり変わらなかったのですが・・・
数年後、数十年後に自分が成長できていて、またこの本を読んだら、
今よりもっと共感できるようになっていたり、また違った部分が見えてきたりするのかな、と楽しみです。