読書感想『友だち幻想』|幻想に囚われた漫画キャラクターたちと『黒い羊』

 欅坂46『黒い羊』が唄う同調圧力

「全員が納得する答えなんかない」「 一人だけ意見の違う僕のことは無視すればいい、みんななに説得されるほうが居心地が悪くなる」欅坂46の新曲「黒い羊」 は、学校などの空間で起こりがちな同調圧力を受ける側の葛藤を表現した曲。

この曲を聞いて、昨年読んだ『友だち幻想』の事を思い出しました。すでに「幻想」から抜け出したている人は、当たり前の事しか書いていないじゃん?と思われるかも。しかし私にとっては30年生きてきてようやく分かってきた他人との付き合い方。本書はそんな「人間関係の真実」について、中学、 高校生に向けて書かれた本です。 私も中学生のとき知りたかったよ・・・。

 

「友だち幻想」とうタイトルの意味

  • どんな人も話せば分かる、真剣にぶつかれば心を開いてくれる、
  • みんなで仲良くするべき
  • 自分のことを100%理解してくれる人にいつか出会えるはず

それらが本書でいう「友だち幻想」の正体。同調圧力スケープゴートも、そういった幻想から生まれるもの。

みんな仲良くなんて無理。

友だち(または恋人や家族)なら、自分のすべてを理解してくれるだろう・・・という願望も、他人を自分の気持を反映する道具としか見ていない自己中心的な思考だ、とバッサリ。う〜〜〜〜〜〜ん思いたる節あるある。他人は他人でしかない、という当たり前のことが若いときって何故か分からないんですよね・・・。

 

苦手な人との付き合い方の正解

学校や職場という逃げられない箱の中で、どうしても出てくる合わない、苦手だと思う人。ここで話し合えば分かり合えるはず・・・という「幻想」にとらわれているとお互い摩耗してしまう。世の中合わない人はかならずいる、だからこそ「距離をおく」ことが正解・・・というお話。学校ではこれを許してくれないシチェーションもたまにあった気がする。冒頭の『黒い羊』の歌詞に出てくるように、最後の一人まで説得する的な。なので気づきにくいのかも・・・・。

 

信頼できる他者を探すという考え方

人は人、自分は自分。そこに気付いて、幻想から解放されてからが本当の人付き合いとなるのでしょう。諦めることも必要ですね。100%分かり合える訳じゃ無いけど、この人と出会えてよかったと思えるような「他人」に出会えたらこれほど幸せなことは無いですね!

またそれを手に入れるためには楽しいだけの甘い部分だけじゃだめで、 楽だけしていては得られないとの忠告もあります。ぶつかって傷つくのが怖かったり、新しい関係作りが面倒くさかったりするけど、それを乗り越えないと得られない。何事も修行だ・・・・。

 

友だち幻想に捕らわれたアニメ、漫画の人物たち

漫画やアニメにでてくる人物で、ああこのひとも「幻想」とらわれていたんだなあと思い出した人たちです。だいたいヤバイことになっている。


草摩慊人『フルーツバスケット

はるか昔の先祖(十二支)たちが、「永遠に一緒にいよう」と誓った絆が呪いと化し、代々残っている「草摩家」の当主。呪いの継続によって「永遠の絆」を望み、十二支たちを支配しようとします。
その絆の呪いが薄まり、解けようというというときに「永遠も絆もない、他人だらけのそんな世界は怖い」と泣きわめく姿が切ない。「絆」のお陰で無条件に愛され存在に産まれてきてしまったら、いきなりそれが無くなるのは恐いよね・・・。『フルーツバスケット』の中でも特に好きなキャラクターです。

ネルフの皆さん『新世紀エヴァンゲリオン

「他人がいると傷つけあったありわずらわしいことだらけだから人類皆一つ溶け合って新たな生命体になろう」というトンデモ計画をしてしまう世界のお偉いさんたち。きっと人間関係に疲れて絶望してしまったんだろうなあ・・・。その計画が実行され、実際に人類は溶け合いひとつになったのですが、主人公の碇シンジはそのぬるくて幸せな世界から自分の意志で抜け出し、傷つけ合いながらでも他人と生きていくことを選びました。

・・・と私は解釈していますが正直よく分からない。たぶん一生エヴァの解釈には悩まされる。好き。 

仲村さんのお母ちゃん『トクサツガガガ

先日最終回を迎えた実写ドラマ、とても良かったですね!男の子が好む特撮ヒーローものが大好きな娘(仲村さん)にとって、 脅威となる人物であるお母ちゃん。娘だから、心配しているんだから、根気強く説得し続けていれば、きっと分かってくれるはず、自分と同じ意見になるはず・・・。と結局娘である仲村さんを追い詰め、ついには絶縁宣言までされてしまうという・・・。
たとえ我が子であろうと、 自分とは違う考えをもったひとりの人間であるということに気づければ、もっと道があったのではないか。娘の心配はせずにはいられないし難しいですけどね・・・

他にも探したら当てはまるキャラクターは沢山いそうですね。「こういうことってあるよね・・・とぼんやり分かりかけていた事がはっきりと言語化され、自分の中でカテゴライズされてスッキリしました。