漫画感想『メタモルフォーゼの縁側』|何歳になっても「好き」は最高

『この漫画がすごい!』2019オンナ編で第1位、 文化庁メディア芸術祭 マンガ部門新人賞など、数々の賞を受賞されているのも納得。暖かくてほっこりしたストーリーなのに、胸がっぱいになって涙してしまう漫画でした。何かを「好き」な気持ちって素晴らしいですね・・・・。

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メタモルフォーゼの縁側(1) (単行本コミックス)

メタモルフォーゼの縁側(1) (単行本コミックス)

 

 

あらすじ(キャラクター設定ネタバレあり)

夫を亡くし一人暮らしの老婦人、雪さん。ふらりと立ち寄った書店でたまたま手にとった美しい絵柄のコミックスはBLでした。75年の人生で初めて知る世界。そして書店員でBL好きの女子高生うららちゃんと出会い、不思議な友人関係が始まります。

日常生活の描写がとても丁寧。老女と女子高生のまったく違う世界がひとつの「好き」で繋がっていく様子をありありと見ることができて、そこがいい意味で生々しくてすごく良いです。

 

時間は有限であることにふと気付かされる

二人のほのぼのとした交流の中でふと、これからの時間が沢山あるうららちゃんに対し、雪さんのこの先の時間はそんなに残されていないであろうことに気付かされます。

漫画の奥付から次の発売日を予測して完結まで読めるか考えたり。体力の衰えによってできなくなったことに直面したり。でも雪さんは、大好きになったBLと、うららとの交流に励まされ毎日を元気にキラキラと過ごしていくんですよね。

そんな雪さんに接して、引っ込み思案だったうららちゃんも少しずつ変わっていく。そしてこんなセリフがあります。

「何歳かになったらやってもいいと思っていてたいろんなこと 別にいつでも 今やっていいのかもって」

女子高生で気付けるなんてすごいようららちゃん。グサリと刺さってくる・・・・。いつかやろうって無意識にいろんな事を先延ばしにしているダメな大人の私の心に・・・・・。

 

新しいことを受け入れられるって偉大

初めて行った同人誌即売会ではもちろん雪さんは知らないことだらけなんですよね。でも分からないことがあれば聞いて、いいと思ったら買って、と普通に楽しみます。

他のシーンでもあるんですけど(はじめてのコメダ珈琲シロノワールを食べたり)、雪さんは「初めてのこと」「知らないこと」に飛び込むときに偏見やためらいがなくてすごく素直なんです。

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年齢制限で欲しい同人誌が買えなかった恥ずかしさから塞ぎ込んでしまったうららちゃんもそんな雪さんに励まされます。

「恥をかきたくない」って気持ちが優先して何も行動を起こせなかったらもったいないですもんね。マナーとか他人への気遣いは必要として、それさえあれば恐れることは何もない。

「そんな年してみっともない」「そんなもの好きなんて恥ずかしい」とか他人に対して思うことって、それだけ自分を縛ってしまう。その点雪さんはなんて自由なんだろう。

歳をとって新しいことを素直に受け入れて楽しめる、そんな雪さんのような成熟した人間に私もなりたいものです。そしてひっそりとでも、一緒に楽しめる仲間がいればめちゃくちゃ楽しい。ただただ純粋に、素直に「好きなものを楽しむ」ことって素晴らしい。そう思える漫画でした。

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